我が家はいわゆる注文住宅で、建築当初から広いウッドデッキが家の前方に存在する。基礎はコンクリート、フレームは鋼鉄製、デッキ板はハードウッドと、耐候性に優れた素晴らしい仕様だ。この広いデッキがあれば、一人焼き肉も日曜大工もやり放題だなとほくそ笑んだものだが、現実はそう甘くはなかった。
春を過ぎると容赦なく鋭い陽射しが肌に突き刺さり、夏が来ると雨が降ってデッキの上はびしょ濡れだ。この上で色々と物を作ってはきたが、どうしたものか、これでは不便すぎる。陽射しと雨を遮る屋根が欲しい。
普段は家具などを作る際、設計はメモ帳に思いつきを殴り書きといういい加減なスタイルで行っているが、さすがに今回挑むデッキ屋根はサイズが桁違いだ。いい加減な設計をすると数ミリの間違いが積算され、後々にその誤差が致命傷になりかねない。
設計にあたり使用したソフトウェアは使い慣れたAdobeAi。DIY程度の簡単な設計であれば十分に使い物になる。構造としては、3本の柱を立ててその上に約4.5m幅の軒桁を乗せ、そこから垂木を等間隔で渡し、野地板、アスファルトルーフィング、屋根材の順に施工した。
あまり予算を費やす事はできないので、基本的に近所のホームセンターで手に入る材料で賄う。ただ、屋根材だけは希望する物が手に入らなかったので他県の大型ホームセンターまで仕入れに行った。
- 木材:2×4材・杉角材・防水コンパネ
- 金具:シンプソン金具、シンプソンビス・コーススレッド
- 屋根材:アスファルトルーフィング(防水シート)・オンデュリン(屋根材)
コストは合計で5万円以内だったと思う。
防水塗装を施し、鋸で規定寸法にカットした杉角材をウッドデッキ上に立てる。シンプソン金具でデッキの板材に固定した後は水平儀で垂直を出し、ここだと決めた位置で仮止めした。
軒桁の長さは4mを超える。某ガテン系アイドルのようにノミを駆使して角材を繋ぎ合わせるスキルを持ちあわせていないので、3枚のシンプソン金具で2本の角材を接合。接続箇所は中央の柱に乗る形となるので強度は問題無いかと思う。4.5mの軒桁を仕上げた後は柱の上に乗せる訳だが、家に誰もいなかったので柱にガイドとなる仮材を付けたりと工夫して何とか乗り越える事ができた。柱に軒桁を乗せた後は金具で固定。まだまだ序盤だ。
垂木同士がコの字型の溝で嵌め合う事で強度を得たい。溝掘りにはスライド丸鋸を活用した。
切断の深さを調整。センターで切り止まるようにし、短い感覚で溝の幅に併せて彫る。彫った後はノミで叩き落とせば
このようにきれいな仕上がりに。
加工後の垂木は軒桁と母屋に金具で接合した。作業中雲行きが怪しくなり、間もなく雨が降り始めたが、ブルーシートを被せて作業続行。社畜にとっては貴重な休日、少しの時間も無駄にしたくはない。この雨さえ耐えれば後は全天候型のデッキが手に入るので我慢だ。
日を跨ぎ、更に作業を進る。垂木の溝同士はゴム槌で叩いて嵌め合わせたが、思いの外寸法に余裕が無く、クランプで締めあげて何とか組み上げる事ができた。脚立に登っての作業は緊張感も相まって普段以上の疲労を覚えるが、これで骨格は完成したのだ。ゴールが見えてくると、その疲労も心地よくなってくる。作業後に飲むビールの味わいは格別である。
ついに野地板の設置にまで到達した。サブロクの板を垂木に乗せるものの2寸勾配を取っている為、乗せたそばからずり落ちてくる。このまま上に乗って作業すれば板ごと地面にダイブしかねない。1枚目の板はクランプや重しの板で仮止めをしてからビスで固定。これで足場が出来たので、屋根に登って2枚目、3枚目の板を貼ってゆく。ところで屋根の上での作業は非常に目立ってしまう。家の前の道が近隣の人の散歩コースになっている為、度々声をかけられた。
「本職の方ですか?」
いえ、社畜の事務職です。
本物のプロに見られたら、その仕上がりは苦笑ものだと思う。
野地板を貼った後はアスファルトルーフィングを高い位置から順に敷き、タッカーで固定。母屋との間にはコーキングで防水。これで取り敢えずは雨が降っても安心だ。
この後屋根材を貼るまで暫くの日数を開けていた。この時点で屋根材は購入しておらず、何を使うかで悩んでいた為だ。一般的な波板は非常にチープな仕上がりになってしまうので、欲を出して隣県の大型ホームセンターまで赴き、フランス製の屋根材オンデュリンを購入。このDIYで一番費用を要した部材となった。
購入後は早速施工に取り掛かり、専用の釘で固定。屋根と母屋の境には大きな隙間が開いたが、専用の波板の形に合うスポンジのような材料を隙間に入れ、たっぷりのコーキングで防水を施した。
以上の行程を経て冒頭の写真の様なデッキ屋根を完成させた。本当は垂木に鼻隠し板を付け、雨樋を設置しなければならないのだが、今ではすっかり忘れてしまっており、この特集を書いてようやく「いい加減続きをやらなければ」と思い始めている所だ。
肝心の強度だが、頑丈に作ったつもりとは言え所詮は素人仕事。台風が来る度に心配でたまらなかったが、何度かの台風を立派に耐え抜き、この屋根は現在でも堂々と陽射しと雨から僕らを守ってくれている。
「ワイの設計と施工に間違いは無かったんや….」
と少しだけ自信を持つことができた。少ない予算と低いスキルでも屋根は作れるんだ。
ちなみに現在は冒頭の写真の姿から随分と様変わりしている。いずれ書き起こしたいところ。